サカイ引越センターは大幅利益増
「勉強しまっせ」引っ越しのサカイの愛称でおなじみの引っ越し大手、「サカイ引越センター」。
同社2017年第2四半期の決算情報によると、連結営業利益が前年同期比93.8%増とのこと。ほぼ2倍と言うことです。一体サカイに何があったんでしょうか?
人材採用難で値引き幅圧縮 平均単価10%アップ
引っ越し業界全体にいえることですが、とにかくキツイ引越し業者はどこも人材の採用には苦労しています。
正直、できる人がいても、怪我(腰痛など)で現場を離れざるおえなかった、という厳しい肉体労働の現実があります。
営業にしてもピーク時・繁忙期と閑散期の差が激しいと、いろいろ無理もしないといけないところで、他社との競争ももちろん激化しています。
そんな厳しい引越し業界を支える人材を確保するためには、待遇改善=具体的には賃金や給料のアップしかありませんよね?
特に閑散期も正社員を維持するためには、繁忙期でむやみに利益の出ない仕事で消耗している場合ではありません。繁忙期にしっかり利益を出せる案件に注力していくことが重要なわけです。
こういう通年でかかってくるコスト、でも一番削ってはいけないコストをしっかりまかなうべく、サカイでは値引き幅を圧縮しているようです。結果的に平均単価が10.7%アップの106,631円になりました。
作業件数は微増を確保
それでも作業件数は前年同期比1.6%増を確保しました。これはすごいことですよね。値下げしなくても、競合他社に勝てた!というのはサカイ全体で大きな自信になったのではないでしょうか。
- CMによる知名度・信頼度の高さ
- 規模の大きさによる融通の利かせやすさや本来のコスト抑制力・価格競争力の強さ
- この期間の社員さんのがんばり
など、様々な要素があったと思います。これはひたすら賞賛したいですね。
特に自社トラックの豊富さや拠点・スタッフの多さは、固定費用ともいえますが、不要な外部への支払いを抑制でき、利益が読みやすいと言えますよね。
売上高は15.1%増
合計で売上高は15.1%となりました。少子高齢化の厳しい環境の中、これもなかなか達成できない数字です。
間接費の削減が利益大幅アップに寄与
しかし、これだけではほぼ2倍になった連結営業利益の説明はつきません。
同時に、
- 労務費
- 人件費
- 広告宣伝費
も効果的に削減し、対売上高構成比が低下したことで、大幅な営業利益のアップに寄与したとのこと。
かなり細かい財務やバックエンドの努力とフロント(営業や作業員)の努力がうまく合致したといえるでしょう。
2018年3月期業績予想も史上最高を予想
この好調な中間決算を受けて、通年の業績予想も上方修正しています。
売上高が前期比9.7%アップ、営業利益は同27%アップで、過去最高売り上げや過去最高益を見込んでいるようです。
平均単価に注目
ところで、今回の決算で利用者にとって一番影響があるのは、「平均単価が10.7%アップの106,631円」と言う部分。これは、前期の平均単価は96,324円に過ぎなかったということを示しています。
何回か引越しをしたことがある人なら分かると思いますが、これは非常に安いです。
引越しには様々な規模があります。
- 単身・学生引越し
- 夫婦など二人の引越し
- 子供も含めた家族全体の引っ越し
- オフィス・企業の移転
このうち、オフィスや企業の引っ越しは規模によってまちまちですし、サービス業か製造業かでも違いますが数十人人を集めて、数百万円かかってもおかしくありません。
家族全体の引っ越しでは一戸建てかマンションや沈滞か、や子供の人数・年齢にもよりますが、20-40万円程度が相場。転勤の場合は、雇用主が費用を出してくれるので、利用者もあまり値引き交渉をせず、10-20万円上乗せできることもあります。
若い夫婦など二人の引っ越しだと、どちらかというと、趣味のものの量が多いかどうかや家電製品・楽器(ピアノ)・仏壇・バイクや原付など特殊なものがあるかどうかが大きく影響しますが、こちらも10-20万円程度が引っ越し料金の相場。
そうなると、顧客単価が10万円以下で想定できるのは、単身や学生の引越し(3-10万円程度)のみとなり、その件数が大きなウェイトを占めているということが推察できます。ひょっとすると50%近くを占めているのではないでしょうか。
子連れの家族だと、転校を嫌がったりするので近隣引っ越しが多いですが、就職・入学などによる単身引っ越しやサラリーマンの単身赴任だと、荷物が少なくても移動距離が長くなってしまうので、1件当たりでそれほど大きな利益は望めません。(これはどの引っ越し業者も同じ)
もともと値下げ余地の少ない単身引っ越しですが、引っ越しのサカイがどこを中心に値下げ幅を圧縮して、平均単価を高めに誘導したのか、もうすこし調査したいと思います。平均化すれば1件当たり1万円近くの最終料金の値上げが行われたということ。いくら最大手のサカイと言っても、そんなに単純に全ての案件を値上げしてすむような問題ではないでしょう。
単身引っ越しは競合が多い
単身引っ越しと言うと日通やヤマトなどの宅配業者ががんばってCMしています。
どちらかというと、「荷物を運ぶ」に重点を置いているグループです。
単身引っ越しは荷物の量も少なく、ある程度パターン化しているので、パッケージ化しやすく、高度にトレーニングされた「引っ越し職人・マイスター」でなくても引っ越しが可能だからです。
全国展開しやすい一方で、配送業者は家具以外のもの(野菜や果物など)も運ばされることがあるので、トラックを引っ越し専用に分けていない業者に関しては避けたほうが、ゴキブリなどの害虫やニオイなどのトラブルを避ける意味ではおすすめです。